写真作品を撮る101個のコツ

「絵づくり」の心で写真作品を撮影するために、必要な基本的な写真撮影のコツを紹介します。

2014.5.11


光で描く写真の技法 

 

  1. 光の空間
  2. 構図(フレーミング)
  3. 焦点(フォーカスポイント)
  4. 配置
  5. 背景

 

レンズによるボケ表現の説明


 

絵づくりには、なぜf1.4やf2.8などの明るい単焦点レンズが必要なのか。


 単に、暗いところでも明るく撮れるからというわけではありません。目的はボケ具合いにあります。
 f1.4にすると、ピントが合う前後の幅、被写界深度が1ミリ以下にすることができます。つまり、f1.4のレンズだと、ピントが合っている部分が少なくすることができるのです。(ちなみに、コンデジやアイフォンではとにかく安く作って、ピンボケをなくしたいので、明るくないf4.5や5.6以上などのレンズになっています。)



 写真の絵づくりで使う要素を、私なりに5つに絞ると明るさ、色、奥行き感、配置、ストーリーです。

 これらをボケという技法を使うと、より効果的な表現にすることができます。


 ピントをあわせない領域の表現であるボケは、それを絵づくりでコントロールする効果的な方法です。

 ボケとはレンズの焦点から外れた部分が「ぼわっと」ぼけている状態のことです。

 

 海外でも、Bokehという英語が通用するほど、日本人独特の美的感覚です。

これは、日本画の「たらしこみ」「朦朧体」などの画風、水墨画などの画風のなかで日本人が発見し好んできた絵づくりの表現です。いずれも生まれた当初は「邪道」だと揶揄された新しい技法です。

 

 一方、古典的な写実主義の絵画世界からは邪道といわれたフランスの印象派絵画があります。古典的な写実主義と違い「輪郭を描かない」「宗教がのような明確なテーマがない」「対象を忠実に写していない」という批判がありました。

 また、浮世絵の構図や配色やデザインの抽象化やテーマなどに新しい価値を見出しジャポニズムの影響も受けました。日本人の感覚に響くものがあるのか、日本では未だに印象派絵画が人気にとなっています。

 

 印象派絵画を代表するモネの「睡蓮」などは、光のグラデーション自体を絵作りの軸にしています。「ルーアン大聖堂」や「積み藁」などの3連作は、写真のホワイトバランスの露出補正のように時間による光の色温度(ケルビン)を捕らえています。まるで、写真雑誌のホワイトバランスのテストサンプルのようです。

 

  印象派の画家が作り上げた表現を写真で実現するためにはどうすればよいのか?

 

 この光の表現を写真で実現するには、ボケ技法が重要なポイントです。普通のカメラではハッキリくっきりしか写らないからです。作品としての写真撮影を試行錯誤しながら探求しています。 

 まだまだ習作のレベルですが、私の写真表現のボケ表現にはこういう絵づくりの背景があります。

 

 ※このウェブサイトにある写真の「夢幻撮法」によるボケについては、別の機会に紹介します。

 

 

 

ここからは誰にでも役にたつ写真撮影のコツです


レッスン1 絵づくりのコツ
 
  1. 感じたシーンを美しく残す。
  2. 自然光で撮る。光を整える。窓辺。
  3. 写真の下は白い余白を作らない(上か斜め上に抜けるように)
  4. 白飛びで透明感をつくる。
  5. 一番いいところだけを切り取る。
  6. 見えていない部分に想像の余地をつくる。
  7. 主役にピントを合わせる。
  8. ピントがあったところが目線の開始点。
  9. ピントがあったところから、ボケに向かって目線を移動させる。
  10. 終点は明るい、白いところに抜け(出口)を作る。
  11. 自然に見せる斜め配置。
  12. 似た形を繰り返す。
  13. 一つ一つバラバラではなく、3つの組み合わせで配置する。
  14. 背景の色は同系色にする。
  15. 背景の色を補色にしてインパクトを出す。

 


レッスン2 レンズを選ぶ

 

「絵作り」をじっくり考えて撮るためのレンズ仕様。

 カメラセットのレンズや広角から望遠までが一本で取れるようなレンズは、記録のためのレンズです。できれば作品づくりには使わないほうがよいです。

 レンズは、絵を描く道具であり絵の具や絵筆です。同じメーカーによっても、ズームが単焦点かどうかによっても、ぜんぜん違う写真になります。

 必ずしも高いレンズが良いとも限らず、良い描写のレンズと出会うことが大事です。

 銘玉と呼ばれるレンズは昔ものに多く、最新の高性能なレンズでは同じような作品が撮れないところが面白いです。

 

 写真入門者にとって最初のおすすめは、標準レンズやマクロレンズを使った接写です。もちろん、そのまま人物や風景も撮れます。

 

  1. テーブルフォトや1m以内の被写体に絞る
  2. f2.8よりも明るい単焦点レンズに絞る
  3. 明るいレンズでフォーカスボケをコントロールする絵づくり
  • フルサイズのデジカメなら、Tamron 90mm f2.8 マクロレンズ
  • ミラーレス、APSCならCanon 50mm f1.4
  • Contax Planar 85mm f1.4

 

 絵づくりを練習しマスター(私はまだまだですが)するためには、単焦点レンズのマクロがいいです。

理由は、5つの基本要素を自分でコントロールするから。

 

  • カメラボディとセットのキットレンズは使わない。撮れる絵が限定的。
  • 工夫の余地が少ない安いズームレーズや望遠レンズ。誰がとっても似たような絵になる。
  • 本当は空間認識と構成力が問われる広角レンズ。初心者はなんでも入る大きな器になってしまいがち。

 

 

 安価に手に入れられる一般的なレンズ。いずれも、表現・描写は「銘玉」といわれています。

 さらに、お手軽に安く接写レンズを使うには、通常のレンズに接写リングをつけて、より被写体に近寄ることでいいボケが作れます。

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レッスン3 光空間のセッティング

 

  • 拡散光(曇空、木陰、朝)
  • 夕暮れの逆光
  • 日暮れのブルーモーメント
  • 夜明けのブルーモーメント

 

※真昼の晴れの日にはなかなかよい写真になりません。

 さらに、レフ板、乳白色のアンブレラなどを使って影をつくる必要があります。

 

 


レッスン4 カメラを操作する

 

絞り優先モードAvモードで撮る(ボケをコントロールする絵づくり)

 

  1. 絞り
  2. ISO感度
  3. シャッタースピード
  4. 露出補正
  5. ホワイトバランス

 

 

絞り 

  1. f値はレンズの中の光の通り道の口径サイズ
  2. 光の量をコントロールする
  3. 焦点が合っていないところの画像のボケ具合をコントロールする

 

 設定

  • ぼかしたい、浅い被写界深度、f1.4、f2.8 (花、人のポートレート)
  • 全面にピントを合わせたい f8、f11(風景)
  • 適度なボケとシャープさ f5.6(人、旅行、スナップ)

 

ISO感度

  • ISO100または200
  • 日陰ならISO 400またはISO AUTO(1600まで)
  • 5DMARKIIIなど最新の高級一眼レフならISO AUTO(6400まで)

 

シャッタースピード

  1. 最低60分の1秒ないと手ブレする
  2. レンズのミリ数分の1以上(フルサイズセンサー一眼の場合)
  3. レンズのミリ数分の1 x 1.6 以上(APSCセンサー一眼の場合)

 

 設定

  • 50mmならシャッタースピード50分の1
  • 200mmなら200分の1

 

露出補正

  1. 光の量を補正(調整)する
  2. 明るすぎると色が薄くなる、暗いと濃くなる発色
  3. カメラの自動調整はまちがうので補正してやる(Av、Tv、Pモードなど)

 

 設定

  • ファインダー内の画像の平均18%グレー(日陰の肌色)が基準
  • 評価測光(通常の自動)なら、基本は白=+1、黒=-1
  • スポット測光なら白=+1、黒=-1
  • 光の強さで補正を調整する。

 

ホワイトバランス

  1. 色の温度ケルビンで考える。カメラの晴れマークは5200-5400K。
  2. 太陽マークで撮って、RAW現像で調整する
  3. 太陽の光は朝青っぽく、昼白く、夕方は赤っぽい、青空の下は青っぽい、森の緑の中は緑っぽい

 

 設定

  • 5000kでスキっとした発色に。
  • 4000kで青白い発色に
  • 6000Kで黄色っぽい発色に

 


レッスン5 花を撮る

 

  1. 昼間や晴れ、直射日光では絵にならない。(発色、影)
  2. 光空間を把握に美しい色のトーンを引き出す。
  3. 色が透けて輝く逆光をつかう。
  4. 立体感をだす半逆光をつかう。
  5. 逆光の影は白い板などレフ板(反射板)で影を減らす。
  6. 明暗差がきつい影ができるので、直射日光は使わない
  7. 平板な絵になる順光は使わない。(順光は記録写真、スナップ用)
  8. 陰影を活かして立体的な質感をだすサイド光を使う。
  9. 露出補正は 白い花は+1、緑、黄色、赤は+0.5、黒は-1
  10. 露出は明るめにするハイキー調で綺麗に

 


レッスン6 タテ構図

 

  1. 要素の存在感を作者がコントロールするにはタテ構図が有効。
  2. タテだと一番下から上までを使って、奥行きの表現がしやすい。
  3. 構成する要素が幅の狭い中に凝縮される。
  4. 余計な要素を「引き算する」ことが必須。
  5. 横方向に配置できる領域が少ないので「主役の存在感」をひきたてる。
  6. 構成に工夫が必要です。つまり、フレームからはずす「引き算」です。
  7. タテを3分割すると、バランスのよい3つの横長長方形ができる。
 

 

  •  カメラ自体はヨコ構図が標準になっています。これは、映画フィルムをつかっていた最初の35mmフィルムからの常識的な発想でそうなっています。劇場はヨコにしか広げにくいから。
  • 人間は奥行きをタテで認識する(たぶん)
  • 人間はタテ方向に存在感を認識する。東京スカイツリー、トーテムポール、身長。
  • 日本の掛け軸ってすごい?日本語の縦書きってすごい?

 

 ※風景写真では、広大さや多くの要素を取り込むためにヨコ構図が一般的です。しかし、あえてタテ構図をつかうことで、風景においても絵づくりがより意識できます。

 


レッスン7 余白と背景を見せる

 

  1. 主役は背景で引き立てる
  2. 余白にストーリーを語らせる
  3. 配置に意味を持たせる余白

 

 


レッスン8 ピントとボケ

 

 風景写真では画面の全部にピントが合っている写真が多くそれでよい(パンフォーカス)ので、特に考えることはありません。ここでは、数センチから数メートルまでの被写体を撮影する場合について説明します。

 

  1. ピントが合っている領域は20%もない人間の目の感覚。
  2. 立体を空間認識する人間の目の感覚をボケで表現する。
  3. 時間の流れをボケで表現する。目線の移動で時間の流れを表現する。

 

  • 主役にピントを持ってくる、そしてストーリーが始まる。
  • 全部にピントが合っている写真は不自然。
  • 見えない領域のボケは想像をかきたてる。
  • 人間の想像力は見えているものによって邪魔されることもある。
  • 人間はないものを想像するようにできている。

 

  1. 面焦点(大きな領域で合っている)
  2. 点焦点、線焦点(ごくピンポイントにあわせる)
  3. 前ボケ・後ろボケ・玉ボケ(存在感のある表現)

 


レッスン9 色のコントロール

 

  1. 明るさで色は変わる
  2. ピントとボケで色は変わる
  3. ホワイトバランスで色は変わる

 

  • フィルムは撮影時で簡潔させる。
  • デジタルは、撮影時とポストプロセスでのコントロールの両方が不可欠。
  • 彩度がきつすぎる日本人の常識。
  • カメラメーカーによって色が違う。昔のフィルムでもいろんな色の種類がありました。派手派手の富士フィルム、色調を抑えたコダックなど。
  • 誰が色を決めるのか?フィルム時代はフィルムメーカー、過去10年のデジタル時代はセンサーをつくるカメラメーカー。さらに、ここ5年のデジタル時代は写真作家自身がポストプロセス(RAW現像)で色を決めることができます。

 

 

 アンセルアダムスの「ゾーンシステム」は、モノクロなら明暗のトーンだけ。

カラー写真は3つある。

 

  1. 明るさのゾーン
  2. 彩度のゾーン
  3. 色組み合わせのゾーン

 

※これに、立体空間コントロールのゾーンを加えることで、「夢幻撮法」は生まれたと考えています。余談ですが、アインシュタインは相対性理論で重力によって、「時空が曲がる」「光が曲がる」ことを説明していますが、夢幻はこれです。

 

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レッスン10 色の組み合わせ

 

  1. 同系色で統一感を出す方法
  2. 補色で色を前に出す方法
  3. 背景色で感情を表す。

 

  • 「光でストーリーを書き、色で感情を描く」という映画監督の言葉を聴いたことがあります。どの色がどんな感情とつながっているのか。
  • アメリカのテレビドラマCSI黄・緑・赤の演出照明の使い方から学ぶ。
  • ゴッホは、色のついた毛糸を組み合わせて、色の組み合わせが印象にどう影響するかを研究していました。たとえば、ひまわりなら黄色と緑。
  • 背景が主張しすぎるときには、彩度を落とす・暗くする・ぼかすなどの方法で抑えることができます。
  • 色相環のRGBなどの三角関係を使うと強烈なイメージを作れる。ゴッホが発見したこと。

 

 

 


レッスン11 黒でしめる

 

  1. 光を反射しない黒は特別な存在(無限を表現する)
  2. コントラストをあげることは、黒でしめることと近い
  3. 黒以外の色を浮き立たせる。

 

  • 黒いボードの映り込みで透明なガラスの輪郭を浮き立たせることができる。
  • 日本人は背景のベースが暗闇という認識はあまりしません。背景が白で、線で絵を書くことに慣れています。油絵の文化と半紙に墨絵の文化のちがいでしょうか。
  • 黒でしめるというのは西洋的な感覚から来ると思います。日本人的には、ハイキーでふわ~っと、白ぼけさせる水彩画のような感じ多いです。レンブラント、ルーベンスのように黒をうまく使えると写真は変わると思います。

 


レッスン12 目線の位置 ティルトとシフト

 

被写体の高さとカメラの位置

 

  1. 平行
  2. 上から見下ろす
  3. 下から見上げる

 

  • 平面の構図にオブジェクトを配置するために、目線の位置でコントロールする。
  • 位置の変化で背景が大きく変化する。

番外編 撮影の工夫 

 

  1. 小道具を使うスタイリング
  2. 注目ポイントを強調する「切り取り構図」にする
  3. 逆光でキラキラ、透明感をだす
  4. 白い背景は+1~2補正
  5. 斜めラインは30度、45度、60度
  6. サイド光で立体感
  7. レフ版でやわらかい影に
  8. シンメトリーは圧迫感を与えるので、アシンメトリーで崩す。
  9. 光の反射をコントロール(PLフィルター)
  10. スローシャッターで動きを表現する

 

 

 


番外編 花を取ること

 

 撮影する被写体は、花やモノを使って、自分の半径1m以内にあるものを接写で撮っています。

 鉛筆で静物をデッサンをする絵画のように、光と影と色をとらえる練習として花の写真はとてもよいと思います。

  • 色がある
  • 身近にある
  • 構図をいくらでも変えられる
  • 同じ被写体をいろいろな条件で撮影できる
  • ピントあわせがとてもシビア
  • 背景が選べる