【作品作りとレンズ表現】

 

 特に重要な機材の一つ目は、レンズです。レンズには個性があり、それを生かす絵作りが必要です。俗には「クセ玉」と呼ばれ、欠点は多いが絶妙の表現が可能な能力を秘めています。

 

 レンズ表現には、ピントとボケ、コントラスト、解像度、光の収差、レンズ校正など色々な要素があります。

 

 一般的には、個々10年以内に発売されている「現代的良いレンズ」は、無色透明の真水のように一切の個性がないことが良いとされています。欠点をなくせば良いという価値観です。

 

 しかし、芸術写真の世界では、これは「NO TASTE」ではないかとおもいます。味気ない工業製品の世界での評価基準でしかありません。

 

 一方で、30年以上前のオールドレンズに貴重なレンズがあります。

 

 例えば、ドイツのZEISS。たとえば、プラナー(1897年に発明)という名のレンズがあります。その描写性能は、現代のレンズにも引けをとらないレンズです。30年以上前のレンズが現在でも6-7万円で取引され、未だに素材も設計が同じの新品レンズが15万円ぐらいで販売されています。

 コンピュータが導入されてる以前の世界最高峰の光学技術では、レンズにはそれぞれ個性がありました。銘玉と呼ばれるレンズが沢山ありました。発色、コントラスト、空気感の表現など、この分野では日本のカメラメーカーはまったく足元にも及ばなかったのです。

 しかし、芸術的製品から工業製本へと写真のルールが変わりました。ここ30年間、「無色透明の真水のようなレンズ」では日本のレンズが一番です。(もちろん、高級レンズでは別の話)


 つづく