あるベテランカメラマンの方が印刷した発色が「よくない」ということで、その対処法を私が研究した結果をまとめます。
この撮影者の方の写真は、コンテストに入選するような素晴らしい写真ばかりです。なのに、こんなことになるにはわけがあるはずです。
(ちなみに、コンテスト用には現像所で手焼きしているそうです)
「発色と輝度のズレ」は「モニタの輝度が調整できていない」ことが原因だと思います。
ここでは、詳しい原理の説明はしませんが、
「今できる範囲のことで、こうしてください」
というレベルの話をします。
ここでは、写真専用の色管理モニタを使わない写真家や一般人が、「ある程度正確な色と輝度の管理」をする方法だけを書きます。
RAWで撮影している人なら、DPPやCaptureNXなど現像ソフトのヒストグラムが見られると思います。
自分のモニタで見て、写真の一番明るいところ、白がベストの状態で見える画像を一つ選びます。
白飛びする手前の白い部分のある写真を現像ソフトで開いてみてください。
※この方法では個々の写真によって正しくない場合があります。
※白飛びして、ヒストグラムが右に飛び出している写真は使えません。
明るすぎるモニタで、RAW現像したJPEG画像のヒストグラム
この写真の撮影者は、自分のモニタ上の色と明るさに満足していました。しかし本当の写真自体は、露光が-0.8もアンダーです。(もともと背景は暗いが主役は白い動物で、水しぶきが明るい白)
実際にヒストグラムを見ると、ハイライトが右端から左に余白がある。つまり、ハイライトが白くない(グレー)。
でも、撮影者のモニタでは白に見えています。その理由は何か?
「モニタが明るすぎる」のです。 買った状態のままで使っているモニタは写真現像用に調整されていないと聞いています。
※大半のアマチュア写真家が明るすぎるモニタを使用していると聞いたことがあります。
色管理したモニタでデジタル現像仕上げしたJPEG画像のヒストグラム
色管理したモニタで、きっちり現像仕上げしてみました。
少し、右に振り切れているのは、水しぶきの白を際だたせるためにです。
この明るすぎるモニタを使用した撮影者は、以下の手順を行えば、輝度は正しく調整することができます。(一度やってみてください)
(もし、正確にやリたい場合は、キャリブレーション機器を導入してください。)
もちろん、この手順は「正しく調整されたモニタ」が大前提です。
以下の方法で、ある程度正しい調整を行ってください。
輝度を調整する方法は、何も特別な機材なしで行うのは無理があります。
それでも、調整するには以下の方法でやってください。
この時に、暗いところから始めて、だんだんとグレーから白になります。ただし、この方法だと、白になってからも、どんどん明るくしてしまうことになります。 白 > 明るい白 > すごく明るい白
アンセル・アダムズがつくったゾーンシステムのクレースケールのチャート。
これを表示して、一番右のX(10レベル)が白に見えるように。IXとXが同じにみえたら、明るすぎます。また、0とIが同じに見えたら暗すぎます。うまく、両端の階調がでるように輝度を調整してください。
※私の「色管理したモニタ」でみると、右の白Xは少し暗い白です。これを明るい白にすると、写真用としてはズレています。Lサイズの写真紙を並べて見ても暗いです。
→ モニタをおいている部屋の蛍光灯は大丈夫?
→ 室内光がモニタに写り込まないためにフードが必要
正しい露出の写真をつくるには、撮影した画像データのヒストグラムをみて、ハイライトの白が一番右端、影の黒が一番左端にくるように調整します。
また、デジタル写真の特性として「山の形の頂上が少し右より」に調整します。
印刷や写真プリントの場合、昔ならポジ・ネガです。フィジフィルムのクリエイトなどの写真現像所には、プリンターという画像技師がいて、色や輝度がズレた写真も、きちんと補正してプリントしてくれます。
実際は出てきた仕上がりを、何度も変更指示をして「見栄え良く」技術者がプリントします。一枚あたり数千円の費用がかかります。
そのため、元のJPEG画像がきちんとRAW現像されていなくても、なんとかしてもらえるのです。そのため、元の写真画像の仕上げの良し悪しを認識していない写真家もいます。
デジタルの場合は、JPEG画像がフィルムのポジです。
写真家は自分でデジタル現像します。
RAWで撮影していても、結局ここを学ばないと、JPEG撮りと変わりません。
※残念ながら、デジタル現像仕上げをきちんと学べる講座は普通の「写真教室」にはありません。「写真家パソコン術」はいずれワークショップにして広めたいと思います。